こんにちは。寺子屋ゆず教室長で言語聴覚士の西村千織です。
「どうして漢字が覚えられないのかしら」「文章を読むのに、ものすごく時間がかかってしまって…」
寺子屋ゆずの教室には、そんな不安や心配を抱えていらっしゃるお母さまが多く来室されます。お子さんの読み書きの困難さに気づかれ、ご心配されている方も多いのではないでしょうか。
今日は、読み書きが苦手なお子さんの認知特性について、私たちが実際の指導の中で見えてきたことをお伝えしていきたいと思います。
そもそも「読み書き」とは?
読み書きは、私たちが普段何気なく行っている活動ですが、実は非常に複雑な認知プロセスの組み合わせで成り立っています。
例えば「読む」という行為一つをとっても、文字の形を認識し、その文字と音を結びつけ、意味を理解し…といった様々な処理を、ほぼ同時に行っているのです。
お子さんの中には、この認知プロセスのどこかに特性があり、それが読み書きの困難さとして現れている場合があります。
決して「努力が足りない」わけではないのです。
読み書きの苦手さの背景にある認知特性
読み書きの困難さの背景には、主に以下のような認知特性が関係していることが多いと言われています。
視覚情報の処理の特性
漢字を習得する際に、細かい部分の違いを認識することが難しいお子さんがいます。
例えば「未」と「末」、「千」と「干」といった、似ている漢字の違いを捉えることに特に困難を感じる場合があります。
これは視覚情報の処理における特性の一つです。
文字の細部に注目することが難しく、全体的な形でしか捉えられないために、似ている文字の区別が困難になってしまうのです。
音韻処理の特性
英単語の習得に苦労するお子さんの場合、アルファベットは書けるのに、それらを組み合わせた単語になると、なかなか読めないという特徴が見られることがあります。
これは、音韻処理(言葉の音を認識し、操作する能力)に特性があることが関係しています。
例えば “apple” という単語を見たとき、私たちは自然に「アップル」という音の組み合わせとして認識できますが、音韻処理に特性のあるお子さんは、この「文字から音への変換」がスムーズにいかないことがあります。
ワーキングメモリの特性
文章を読むときに、文章の途中で読んでいる内容を忘れてしまい、何度も前に戻って読み直す必要があるお子さんもいます。
これはワーキングメモリ(情報を一時的に保持し、処理する能力)の特性によるものかもしれません。
読んでいる途中の情報を保持しながら、次の情報を処理することに困難を感じているのです。
お子さんの特性に合わせた具体的支援方法
では、このような特性に対して、どのような支援が効果的なのでしょうか。
- 漢字の特徴的な部分を色分けして示す
- 似ている漢字を並べて違いを明確に示す
- イメージと結びつけた覚え方を工夫する
例えば、漢字の部首に色をつけて示すことで、文字の構造が理解しやすくなることがあります。
また、「未」と「末」の違いも、下の部分に注目させることで、少しずつ区別できるようになってくることが多いです。
- フォニックス(文字と音の対応規則)を丁寧に指導する
- 音声教材を活用する
- 単語をチャンク(まとまり)で覚える
例えば、英単語を音のまとまりで区切って練習する方法が効果的なことがあります。”important” という単語なら、”im-por-tant” と区切って練習することで、少しずつ習得できるようになってくるケースが多く見られます。
- 文章を短い単位に区切って読む
- 要点をメモしながら読む
- 音読と黙読を組み合わせる
長い文章を短い単位に区切り、各部分の要点をメモしながら読む方法を取り入れることで、文章の内容を理解しやすくなり、読み直しの回数も減ってくることがあります。
さいごに〜お子さんの「できた!」を支える〜
読み書きの困難さは、お子さんの学習意欲や自己肯定感にも大きく影響します。
しかし、適切なサポートを行ってあげることで、学習意欲を引き出し、成功体験を積み重ねてあげることができます。
大切なのは、お子さんの特性を理解し、その子に合った方法を見つけていくこと。
そして、小さな進歩を認め、励ましていくことです。
寺子屋ゆずでは、お子さん一人ひとりの特性を丁寧に観察し、その子に合った学習方法を提案しています。
「できない」ではなく「まだできていない」。
そして「どうしたらできるようになるか」を一緒に考えていく。そんな姿勢を大切にしています。
読み書きの習得には時間がかかることもありますが、焦らず、お子さんのペースを大切にしながら、一緒に歩んでいければと思います。
お子さんの学習についてご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
体験授業の中で、お子さんの特性と学習障害につながる原因(理由)について、保護者の方からお話を伺いながら専門的視点で評価させていただきます。