漢字が覚えられない小学生に合った覚え方とは?努力不足じゃない理由とサポート法

漢字が覚えられない子への学習支援

こんにちは。寺子屋ゆず教室長・言語聴覚士の西村千織です。

「家で何回も書かせているんです。でも、翌日にはすっかり忘れてしまっていて…」
これは、保護者の方からよく聞くお悩みのひとつです。

いくら練習しても漢字が頭に入らない。そんなとき、つい「もっとたくさん書かせないと」と思ってしまいがちですが、実は“量”ではなく“方法”のミスマッチが原因のことが多いのです。

覚えにくさの原因は「特性」にあることも

漢字が覚えられないお子さんには、発達に特性があるケースも少なくありません。

たとえば、「音と文字のつながり」があいまいな場合。音読はできるのに、書くとなるとまったく思い出せない。これは「音韻処理」の苦手さが関係していることがあります。

また、「見た形をそのまま記憶するのが難しい」という視覚認知の課題があると、似た漢字を混同したり、部首の位置を入れ替えてしまうこともあります。


さらに、「覚える→書く」という流れの中で、途中の工程を忘れてしまうお子さんもいます。これは「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業記憶の働きが影響している可能性があります。

これらの特性は“努力不足”とは関係ありません。「なぜ覚えられないのか」を理解することが、次のステップへの第一歩になります。

「たくさん書く」だけでは定着しない

「100回書いたのに覚えられない」と感じたことはありませんか?
実はそれ、書く回数よりも“どう書いたか”のほうが大切なのです。

子どもによっては、目で見て覚える方が得意な場合もあれば、音で覚える方が合っている場合もあります。また、指で書く感覚が記憶を助けることもあります。

つまり、「感覚の使い方」が重要なのです。
さらに、一度に10個も20個も覚えようとするより、3つに絞ってしっかり覚える方が自信につながりやすくなります。

覚え方を変えてみよう ― 具体的な方法

いくつかの具体例をご紹介します。お子さんに合いそうな方法をぜひ試してみてください。

部首ごとに分けて覚える

たとえば「話」という漢字。「言」と「舌」に分けて、「言う」と「した=話す」というように意味づけをすると、イメージで記憶しやすくなります。

ストーリーで覚える

「林」は、木が2本並んで“森になる前の姿”。
こうしたストーリー仕立ての説明は、お子さんの記憶に残りやすくなります。

漢字アプリの活用

アニメーションで書き順が表示されたり、ゲーム感覚で反復練習できるアプリは、楽しみながら覚えたいお子さんにぴったりです。

空書き・体の動きを使う

紙に書く前に空中で指を使って“空書き”をすることで、身体感覚を通して記憶が安定するお子さんもいます。さらに、ホワイトボードに大きく書いて全身で覚えるという方法も効果的です。


どれが合うかは一人ひとり違いますが、いくつか試してみることで「これなら覚えやすい!」という方法がきっと見つかるはずです。

保護者ができる声かけとサポート

つい「また忘れてるの?」「昨日あれだけ書いたのに…」と声を荒げたくなる気持ち、よくわかります。けれど、それは逆効果になってしまうことも。

「今日はこの一文字だけ頑張ってみようか」と、目標を小さく設定してあげることで、子どもは安心して取り組めます。

また、「どうやったら覚えやすいと思う?」と、お子さん自身に方法を選ばせてみるのもおすすめです。自分で選んだ方法なら、意欲も続きやすくなります。

そして、少しでも上手に書けたらすかさず「今日はバランスいいね!」と褒めてあげましょう。成功体験が自信につながります。

合わない方法を頑張らせるより、「合う方法」を一緒に探す

覚えられない=努力不足、ではありません。
それは単に、「今のやり方が合っていない」だけかもしれません。

大事なのは、お子さんに合った方法を一緒に見つけていくこと。
学習支援の現場でも、「漢字を覚えるのが苦手な子」の中に、驚くほど語彙が豊かで話す力に長けている子がたくさんいます。
そんな子には、書く練習よりも「漢字を使って文章を作る」「好きな言葉で辞典づくりをする」といった方法の方が効果的なこともあるのです。

自宅だけで難しいなと感じたときには、学習支援の専門家が個別で相談に乗ってくれる場所もあります。私たちもそんなご家庭の声に日々ふれていて、それぞれに合った方法を一緒に考えることを大切にしています。

おわりに

お子さんが漢字を覚えられないとき、つい「頑張りが足りないのでは?」と感じてしまうこともあるかもしれません。でも、その背景には見えづらい“特性”や“学び方の違い”が隠れていることも多いのです。

一人ひとりに合った方法を見つけることは、時間がかかるかもしれません。けれど、その過程こそが、お子さんにとっても、保護者の方にとっても「学びを楽しむ力」を育てる大切な一歩になるはずです。


寺子屋ゆずでは、こうした学習のつまずきの背景を丁寧に見極めたうえで、それぞれのお子さんに合った学び方を一緒に探していくお手伝いをしています。
「何度書いても覚えられない…」そんなお悩みこそ、お気軽にご相談ください。


できることから、少しずつ。一緒に、お子さんの「できた!」を増やしていきましょう。