
こんにちは。言語聴覚士の西村千織です。
「小学校1年生の子で、『は』と『ほ』の違いがわからないみたいなんです」
先日、ある療育事業所のスタッフの方から、そんなご相談を受けました。大人にとっては「たった1つの線があるかどうか」ですが、子どもによってはその違いに気づけず、読み間違えたり書き間違えたりしてしまいます。
これは決して珍しい話ではありません。実際、学習につまずいているお子さんの多くに、こうした「微妙な違いに気づく力」が育ちにくいという課題があります。
「よく見てるはずなのに間違える」その理由とは?
「もっと練習すれば覚えるだろう」「何度もやれば慣れるはず」と思いたくなるのが大人の常。でも、いくら練習しても「は」と「ほ」が同じに見えてしまう子にとっては、それが“苦行”になってしまうことも。
この背景には、「視覚認知」や「形の弁別」といった認知機能の発達が関係しています。
たとえば、
- 線の数や位置に注目する力が育っていない
- 全体と細部を同時に認識するのが苦手
- 順序立てて情報を処理するのに時間がかかる
などの理由から、“違いに気づけない”という状態が生まれます。
このような場合、単に「書く・読む」練習を繰り返すだけでは効果が薄く、「違いを見つける力」「特徴に注目する力」を養う土台づくりが必要になります。
「分かる」より先に「気づく」を育てたい
寺子屋ゆずでは、こうした認知の課題に焦点を当て、一人ひとりの「気づけなさ」に丁寧に向き合うことから始めます。
私たちが大切にしているのは、「正しい答え」を教えることではなく、「自分で気づく経験」を積み重ねていくことです。
たとえば、
- よく似た文字を並べて「間違い探し」のように違いを発見する練習
- 色や形の特徴を強調して「目立たせる」教材
- 書く前に、手でなぞったり、立体的な文字に触れたりして感覚から学ぶ工夫
など、視覚だけでなく、触覚や動きも使ったアプローチで、「気づく力」を育てます。
この「気づけた!」という体験が積み重なることで、子どもたちは少しずつ「分かる」「できる」に近づいていきます。
「また間違えた…」の奥にあるものを一緒に見つけたい
間違えることは、決して悪いことではありません。
むしろ、「なぜ間違えたのか」「どうすれば分かったのか」と一緒に振り返る時間こそが、最大の学びになります。
見え方、捉え方、感じ方――それぞれの子どもが持つ「ちがい」を理解し、そこに寄り添った支援をすること。これが私たち寺子屋ゆずの基本的な考え方です。
「また間違えた」「どうして分からないの?」ではなく、「どこが難しかった?」「何と間違えたの?」という問いかけから始めてみませんか?
寺子屋ゆずは、お子さんの“気づく力”を引き出し、「学ぶっておもしろい!」と感じてもらえるような支援を続けていきます。