発達障害や学習障害のあるお子さんが、文字を枠の中に上手く書くのが難しい理由と改善方法

発達障害や学習障害があるお子さんは、文字を枠の中に書くことに難しさを感じることがあります。

その背景にはさまざまな要因があるため、単に「繰り返し練習させる」といった方法では、効果は感じにくいでしょう。

反対に、効果的な取り組みを考える場合には、難しさの要因や理由を理解することが大切になります。

要因を見つけることができれば、改善するための効果的な手立て(取組方法)につなげることができます。

今回は、文字を枠の中に上手く書くことが難しい理由と、具体的な取組方法について、ご紹介します。

1.空間認識の困難

発達障害や学習障害のあるお子さんの中には、空間認識の難しさを抱える方がいます。

つまり、「枠の中心に文字を揃えるという抽象的な概念を理解するのが難しい」ため、文字が枠の中心に収まらないことがあります。

文字を書くと、隅の方に偏ったり、枠からはみ出てしまうこともあります。

改善に向けた取り組み

この課題を改善するためには、以下のような具体的な活動が有効です。

枠の中心を数値的に意識させる

学習障害のある子どもが枠の中心に文字を配置する練習を行うことで、空間認識能力を向上させることができます。

例えば、定規や目盛りを使って正確な位置を確認しながら文字を書く練習方法があります。


枠の幅を測り、その真中にあたる数値を読み取ることで、「中央」が理解しやすくなります。枠の上下・左右についてそれぞれ計測することで、中心が分かるようになります。

枠をパッと見ただけで中心を判断するためには、抽象的な理解が必要ですが、数値をもとに中心を見つけていくため、お子さんにとっては「具体的な数値を頼りにする」ことができるため、分かりやすくなります。

枠の中に印をつけて文字を書く

枠の中に印をつけて文字を書く練習を行うことで、適切な位置が分かりやすくなります。


例えば、枠の四隅に印をつけて、その中心に文字を書くように指示してあげるとイメージがつきやすくなります。

また、枠の中心に十字の印をつけて、その交点に文字を書く練習も効果的です。

2.運動コントロールの難しさ

一部の発達障害や学習障害のあるお子さんは、筆記用具を使って文字を書く際に、運動コントロール(上手く体や手を使う)の難しさを感じることがあります。

ダイナミックな運動(粗大運動)もさることながら、筆記動作を正確に制御することが難しいため、文字を枠の中心に収めることの難しさにつながることがあります。

改善に向けた取り組み

指先の器用さ向上の練習

細かい筆記動作を、正確に制御するための練習を行うことが重要です。

例えば、折り紙や塗り絵、粘土遊びなどは、指先の器用さを育てるのに最適な遊びと言えるでしょう。

また、指先を使って細かい模様を描く活動や、鉛筆で線をなぞる練習なども有効です。

筆記具の選定

握りやすい筆記具を選ぶことも検討してみましょう。

特に、握りやすいペンや鉛筆、軽量でバランスの取れた筆記具を使用することで、筆記動作をスムーズに行うことができます。


また、お子さんの好きなキャラクターがプリントされた筆記具を選ぶことで、モチベーションを高めることもでき、長く練習することにつながります。

楽しい・好きな活動で運動コントロール力を高める

ボール遊びや鬼ごっこなどの屋外活動、ジグソーパズルやレゴを組み立てる活動などを通して、運動コントロール力を高めることができます。

特に体幹が安定することや、体のイメージを理解できることは、手や指の動きを上手にコントロールすることにつながり、それが筆記動作の向上につながります。

3.視覚認知の課題

視覚認知とは、目で見たものを正しく判断したり識別する力のことを指します。

視覚認知が弱いと、枠を意識し続けることが難しいだけでなく、文字を読み飛ばしたり図形が分かりづらいなど他の面でへの影響も大きくなります。

本来回答できるはずの問題であっても、目で正しく読みとったり判断したりすることの難しさから、答えられないという結果につながってしまうこともあります。

改善に向けた取り組み

パズルや図形を使ったゲーム

視覚認知能力を向上させるためには、パズルや図形を使ったゲームを活用するのが効果的です。

例えば、ジグソーパズルや形を組み立てるパズルゲームは、視覚的な認識や空間把握能力を鍛えることができます。

また、幾何学的な図形を使って形やパターンの認識を促すなども良いでしょう。

視覚的な手がかりを活用した指導方法

色や形、サイズなどの視覚的な特徴を活用する活動は、視覚的な手がかりを活用した方法です。

色つきのブロックやカードを使ってお子さんに色を見分けて整列させるよう指示する、異なるサイズのものを比較して整列させる活動や、サイズの順番に並べる活動などが有効です。

また、量や容積を推測するなどの場合には、コップと水などを使い、体験学習のような形で学ばせていくことも良い方法です。

4.注意力の欠如

発達障害や学習障害のあるお子さんは、注意力を維持することが難しい場合があります。

学習においては、書く作業に集中することが難しいため、文字を枠の中心に収めるという作業に十分な注意を払うことができないことがあります。

改善に向けた取り組み

集中力を養うためのトレーニング

集中力を高めるために最も簡単でかつ効果的なものは、お子さんの好きな遊びや活動を取り入れることです。

理由は、子どもは好きなことをしているときが最も集中力が高まるからです(大人でも同じことが言えます)。

もう一つは、体を使った活動を取り入れることです。特に屋外活動(公園遊びなど)は、脳や全身の血流を改善し、また体を動かすことで、気持ちが落ち着くという効果があります。

血流が良くなることと気持ちが落ち着くことで、集中力は高まりやすくなります。

作業の一部を分割して行う

長時間の作業に集中することが難しい場合、作業を分割して行うことで負担を軽減することが有効です。

例えば、大きな課題を小さな部分に分割し、段階的に取り組むようにすると作業に集中しやすくなります。

また、休憩を挟んで作業を行うことで、疲れを軽減し、集中力を維持することができます。

周囲の環境を整える

集中力を高めるためには、周囲の環境を整えることも重要です。

静かで落ち着いた場所で作業することで、外部からの刺激を最小限に抑えることができます。

また、明るい照明や快適な温度など、快適な学習環境を整えることも注意力を高める上で重要です。

まとめ

枠の中に文字を上手く書くという活動を上手く遂行するためには、上記のような土台が育っていることがポイントになります。

もしお子さんが、枠の中に文字を正しい位置で書くことができないといった課題がある場合は、この土台の部分に漏れがないかをチェックしてみてください。

寺子屋ゆずでは、学習の土台部分にも着目し、授業プログラムを構築します。上記のような課題を感じられたら、初回面談の際にお知らせください。
※寺子屋ゆずは、2024年4月に神戸市東灘区に開塾予定です。

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