ADHDのお子さんの学習ノートの作り方|視覚・聴覚・身体感覚タイプ別に詳しく解説(高学年向け)

こんにちは。寺子屋ゆず代表・言語聴覚士の西村千織です。

「がんばってノートを写しているのに、テストになると全然思い出せない」

「板書を写すだけで力尽きてしまう」

ADHDタイプのお子さんの学習相談では、こんな声をよくお聞きします。


ネットや書籍でよく見る「学びが捗るノート術」は、一見よさそうに見えても、実はお子さんの「脳のくせ」と合っていないことが少なくありません。


この記事では、ADHDの診断の有無にかかわらず、「視覚」「聴覚」「身体感覚」といった学習スタイルに目を向けながら、ADHDタイプのお子さん一人ひとりに合った「学習ノートの作り方」について、ご紹介したいと思います。

一般的な「きれいなノート術」が、ADHDタイプのお子さんには合わない理由

本屋さんやネットには、「きれいにまとまったノートがお子さんの成績を上げます」といったノート術がたくさん紹介されています。
でも、ADHDタイプのお子さんにとって、「ノートを取る」という行為は、次のような“複合タスク”になっています。

  • 先生の話を聞く
  • 黒板や画面を見る
  • 大事そうなところを判断する
  • 手を動かして文字を書く
  • 行をそろえたり、マス目におさめたりする

これだけのことを同時にこなすのは、注意力やワーキングメモリ(頭の中で情報を一時的に覚えておく力)、手先の操作が苦手なお子さんにとって、とても負担が大きい作業です。


その結果、「黒板を写すだけで授業の中身が頭に入らない」「写しているうちに、先生の次の説明を聞き逃してしまう」「途中で疲れてしまい、後半の板書が抜け落ちる」といったことが起こりやすくなります。


つまり、「きれいなノートを取る」こと自体が目的になってしまうと、本来の目的である「理解する・覚える」から、かえって遠ざかってしまうことがあるのです。

ADHDタイプのお子さんにとって大切なのは、「きれいさ」ではなく、その子の脳のくせに合った「楽な情報の残し方」を見つけることだと、私は考えています。

ADHDのタイプは「ざっくり」でOK

不注意優勢・多動衝動優勢・混合型ってどんなイメージ?

ADHDは、医学的には大きく次の3つのタイプに分けられることが多いです。

  • 不注意優勢型
    ぼんやりしているように見えたり、聞き漏らし・書き漏らしが多かったりするタイプです。宿題のし忘れや、持ち物の忘れ物が多いこともあります。
  • 多動・衝動性優勢型
    じっと座っているのが苦手で、席を立ったり、話しかけるタイミングが早すぎたりするタイプです。思いついたことをすぐ口にしたり、行動に移してしまうこともあります。
  • 混合型
    不注意の特徴と、多動・衝動性の特徴が両方とも見られるタイプです。

ここで大事なのは、「うちの子はどの型にピッタリ当てはまるか」を厳密に決めることではありません。

「ぼんやりタイプが強いのか」「じっとしているのが特にしんどいのか」といった傾向を、保護者の方や先生がざっくりイメージしておくことが、日々の対応や学習の工夫を考えるうえで役に立ちます。

ノートをとる活動で起こりやすい困りごと

タイプによって、ノートまわりで表れやすい困りごとにも少し違いがあります。

  • 不注意優勢タイプに多いこと
    板書の一部が抜け落ちる、ページや行を飛ばしてしまう、そもそもノートを開き忘れる。
  • 多動・衝動性優勢タイプに多いこと
    書き始めは勢いがあるけれど、だんだん字が大きくなったり乱れたりして、最後まで続きにくい。席を立ってしまい、板書を写しそびれる。
  • 混合型に多いこと
    ノートの抜け・乱れ・書き残しなど、いくつかの困りごとが重なりやすい。

ただし、ここでも「分類」が目的ではありません。

「勉強のやり方より先に、情報の残し方(ノートの持ち方)を工夫してあげたほうがいいのかもしれない」と考えるきっかけにしていただけたらと思います。

学習スタイルで見る「3つの脳のタイプ」

ここからは、ノート術を考えるうえで特に役立つ「学習スタイル」の3タイプを紹介します。

診断名とは別に、「どんな形で情報を受け取ると一番わかりやすいか」という視点でお子さんを見てみるイメージです。

①視覚優位タイプ(目で見て分かると理解しやすいお子さん)

視覚優位タイプのお子さんは、黒板やプリント、図やイラストなど「目から入る情報」で理解するのが得意です。

  • 教科書の図や表を見たほうがスッと分かる
  • 文章だけの説明だとイメージが湧きにくい
  • 色分けやマーカーを使うと覚えやすい

といった特徴が見られることがあります。

一方で、

  • 先生の口頭説明だけの授業だと内容が頭に残りにくい
  • 板書を写すことで精一杯になり、「どこが大事か」を考える余裕がなくなる

といったつまずきも起こりやすくなります。

②聴覚優位タイプ(耳で聞いたことが頭に残りやすいお子さん)

聴覚優位タイプのお子さんは、話を聞いたり、音声で説明を受けたりするほうが理解しやすい傾向があります。

  • 先生の話を聞いていれば、あとから内容をけっこう覚えている
  • 読むより、人に説明してもらうほうが分かる
  • BGMがあると集中しやすい場合がある

などの特徴が出ることがあります。

その一方で、

  • 黒板やプリントの情報を、自分で整理して読むのが負担
  • 図や表より、「何と説明されていたか」のほうが記憶に残っていて、ノートにはうまく言葉に起こせない

といった難しさが現れることもあります。

③身体感覚優位タイプ(書く・動く・触るなど、体を通して覚えやすいお子さん)

身体感覚優位タイプのお子さんは、「体を動かす」「手で触る」「実際にやってみる」といった体験を通して学ぶと、理解や記憶につながりやすいタイプです。

  • じっと座って聞くだけより、作業をしたり実験をしたりする授業で力を発揮する
  • 手を動かしているときのほうが、話もよく聞ける
  • 書いて覚える、図をなぞる、といった「体を使った覚え方」が合いやすい

という良さがある一方で、

  • 座りっぱなしで板書を写す授業が続くと、どうしても集中が続きにくい
  • 字を書くこと自体に苦手さがあると、「書く」ことへの抵抗感から、ノートを開くことが嫌になってしまう

という難しさも生じやすくなります。

※なお、言葉で考えるのが得意な「言語優位タイプ」のお子さんもいますが、この記事ではまず、多くのお子さんに当てはまりやすい「視覚・聴覚・体感覚」の3タイプを中心にお話ししていきます。

タイプ別:ADHDタイプのお子さんの学習ノートの作り方

ここからは、「ADHDの特性」+「学習スタイル」の両方をふまえたうえで、タイプ別のノートの工夫を考えていきましょう。

視覚優位タイプ+ADHD傾向のお子さん(色・図・写真をいかしたノートのコツ)

視覚優位タイプのお子さんは、「あとで見返したときに、パッと全体が見えるかどうか」がとても大切です。

おすすめの工夫は例えば次のようなものです。

  • 役割を決めた色分けをする
    タイトルは青、重要ポイントは赤、例やイラストは緑、など色の意味を決めておくと、後から見たときに一目で分かります。
  • 板書を全部写さない「キーワード写し」にする
    黒板をすべて写そうとすると、不注意さや疲れから抜け落ちが増えます。見出しとキーワード、図や表だけにしぼることで、負担を減らしつつ要点を残せます。
  • タブレットや写真も「ノートの一部」として考える
    学校のルールが許せば、黒板を写真で残し、家で落ち着いてノートにまとめる方法もあります。プリントを貼るスペースをノートに作り、「見て分かる素材」を一冊に集めていくのも一つです。

このタイプのお子さんには、「ノートは完成させることよりも、自分が分かりやすくまとめることのほうが大事」と伝えてあげると、少し気持ちがラクになることがあります。

聴覚優位タイプ+ADHD傾向のお子さん(「聞く」を中心にしたノートとの付き合い方)

聴覚優位タイプのお子さんは、「授業中にしっかり聞くこと」と「あとから思い出すための少ないメモ」を組み合わせるのがポイントです。

  • 授業中は「聞く」を最優先にしてよい場面を作る
    全部を書こうとすると、聞き漏らしが増えます。先生に相談できる場合は、「ここだけは書きましょう」というポイントを教えてもらうのも一案です。
  • キーワードだけを書くフォーマットにする
    ノートの左側に「キーワード(単語)」、右側に「あとで自分の言葉で説明」を書く形にすると、授業中の負担が減り、復習の質が上がります。
  • 家では「口で説明→一言メモ」にする
    その日の授業で習ったことを、家で保護者の方に口で説明してもらい、最後に一行だけノートにまとめさせる。「しゃべる→書く」の流れは、聴覚優位タイプのお子さんにとって自然な情報整理の方法です。

音声メモや録音が使える環境であれば、「自分向けの音源」を録って、それを聞きながらノートにまとめる、という方法も相性がよいことがあります。

体感覚優位タイプ+ADHD傾向のお子さん(カードやホワイトボードも使った動かせるノート術)

体感覚優位タイプのお子さんは、「ノート=紙の冊子」だけにこだわらず、「動かせるメモ」も仲間に入れてあげると、ぐっと学びやすくなります。

  • 付箋やカードを「考えを動かせるノート」にする
    漢字や単語、重要語句を1枚ずつカードや付箋に書いて、並べ替えたり、分類したりして遊び感覚で覚える。覚えたいことを机一面に広げて、「体でノートを見る」イメージを作ります。
  • ホワイトボードやタブレットで「書いて消せる練習」を増やす
    何度も書いて消せる環境のほうが、書字の負担が軽くなり、繰り返し練習がしやすくなります。その日の「できた!」を、最後にノートへ一枚だけまとめる形にすると、ノートは「成果が見える場」になり、達成感につながります。
  • 体を少し動かしてからノートに向かう
    短いストレッチや指遊び、机上での小さな動きなど、「体を通して脳のスイッチをオンにしてから書く」ことで、集中が続きやすくなる子もいます。

このタイプのお子さんには、「ノートはずっと座っているためのものではなく、動きとともに記録を残すためのもの」と考える視点を持ってあげると、気持ちが少しラクになることがあります。

どのタイプにも共通するノートのゴールの考え方

ここまでタイプ別にお話ししてきましたが、どのタイプにも共通して大切にしたいことがあります。

それは、「ノートのゴールはきれいさではなく、「あとで自分が思い出せるかどうか」という視点です。

  • 板書を全部写していなくても、テスト前に「要点が分かる」ならOK
  • 字が多少乱れていても、お子さん自身が読めればOK
  • ノートだけで完結せず、プリント・写真・カードなどとの合わせ技でもOK

こうした「OKライン」を大人が広く持つことで、お子さんの「ノートへの苦手意識」はぐっと減っていきます。

ADHDタイプのお子さんにとって、ノートは「自分を助ける道具(ツール)」と捉えることができると、学習に対する意識も少し変わっていく、という寺子屋ゆずの実践の中で、このような実感があります。

寺子屋ゆずでは、お子さんの「脳のくせ」に合わせた学習ノートづくりをお手伝いしています

寺子屋ゆずでは、ADHDや学習障害のあるお子さんの「書字のつまずき」「学習中の姿勢」「勉強への苦手意識」などについて、ご相談をお受けしています。

その中で、今回ご紹介したような「学習スタイル」や「脳のくせ」も手がかりにしながら、

  • このお子さんには、どんなノートの使い方が一番ラクか
  • 学校の宿題やテスト勉強で、どんな工夫が現実的か
  • ご家庭では、どこまで手伝ってよくて、どこからを任せていけばいいのか

といったことを、一緒に整理していきます。

「うちの子にはどんなノートの取り方が合うんだろう?」と感じられたときには、一人で抱え込まずに、寺子屋ゆずにご相談ください。

お子さんの「脳のくせ」を理解しながら、お子さんらしい学び方を一緒に見つけていけたらと思います。